なぜエルメスの「カレ」は90年以上愛され続けているのか? ~一枚のスカーフに込められた歴史と職人技~
こんにちは。
ブランド品の買取をしていると、バッグや財布と並んでお持ち込みいただくことが多いのが、エルメスのスカーフ「カレ」です。
「カレ90」「カレ70」「ツイリー」など、さまざまなサイズがありますが、そもそもエルメスのカレはいつ誕生したのでしょうか?
今回は、世界中の人々を魅了し続けるエルメスのカレの歴史について、少し豆知識も交えながらご紹介したいと思います。
■ 「カレ」とは何?
まず、「カレ(Carré)」とはフランス語で「正方形」を意味します。
エルメスのスカーフはすべて正方形というわけではありませんが、伝統的な正方形のシルクスカーフを総称して「カレ」と呼んでいます。
中でも最も有名なのが、90cm四方の「カレ90」。
エルメスの代名詞とも言える存在です。
実は、「スカーフ」と呼ばれるよりも、「カレ」と呼ばれることの方がファンの間では一般的だったりします。
■ カレの誕生は1937年
エルメス初のシルクスカーフが誕生したのは1937年。
意外に思われるかもしれませんが、エルメスは1837年創業ですので、創業からちょうど100年後にカレが誕生したことになります。
記念すべき最初の作品は、
「JEU DES OMNIBUS ET DAMES BLANCHES(白い貴婦人たちと乗合馬車の遊び)」
というデザインでした。
当時のパリで活躍していた馬車交通をモチーフにした作品で、エルメスがもともと馬具工房だった歴史を感じさせます。
ちなみに、エルメスは今でも馬をブランドの象徴としており、ロゴに描かれている馬車もその名残です。
■ 第二次世界大戦を乗り越えたシルク
エルメスのカレの歴史を語るうえで欠かせないのが、第二次世界大戦です。
戦時中はシルクが非常に貴重な資源となり、多くのメーカーが生産を断念しました。
しかし、エルメスは品質へのこだわりを捨てませんでした。
戦後になると、カレは再び世界中で人気を集めるようになり、特に1950年代から1960年代にかけては、多くの王族や著名人に愛用されるようになります。
この頃から、カレは単なるファッションアイテムではなく、「身につける芸術品」としての地位を確立していきました。
■ 1枚のカレができるまで
エルメスのカレが特別なのは、その制作工程にもあります。
一枚のデザインを完成させるまでに、何百時間もの時間が費やされることがあります。
さらに驚くのは色の数です。
一般的なスカーフが数色程度で構成されることが多いのに対し、エルメスのカレは30色以上、多いものでは40色以上が使用されることもあります。
しかも、それぞれの色ごとに版を作成し、一色ずつ丁寧にプリントしていくという、非常に手間のかかる製法を採用しています。
「一枚のスカーフ」というより、「一枚の絵画」と考えた方が近いかもしれません。
■ 実は同じデザインでも価値が違う?
エルメスファンの間では有名な話ですが、同じ名前のカレでも、
・製造年
・カラー
・限定仕様
・復刻版
によって価値が大きく変わることがあります。
たとえば、過去の人気作品が復刻されることがありますが、オリジナル版を探し求めるコレクターも多く存在します。
「見た目は同じなのに価格が何倍も違う」
ということも、カレの世界では珍しくありません。
まるで美術品やヴィンテージ時計の世界ですね。
■ カレは”使うアート”
カレが90年近く愛され続けている理由は、単なる高級ブランド品だからではありません。
首元に巻く。
バッグに結ぶ。
額装して飾る。
時にはインテリアとして楽しむ。
つまり、カレは「所有するアート」であり、「使うアート」なのです。
実際に海外では、ヴィンテージのカレを額に入れて自宅に飾るコレクターも少なくありません。
「今日はどの絵を飾ろうか」
ではなく、
「今日はどのカレを飾ろうか」
という世界が存在するのです。
■ カレの世界は終わらない
1937年に誕生した一枚のシルクスカーフ。
そこから約90年近く経った現在でも、エルメスは毎年新しいカレを発表し続けています。
馬、宇宙、動物、植物、神話、歴史、建築、音楽…。
テーマは無限に広がり、その一枚一枚にデザイナーの想像力と職人の技術が詰め込まれています。
もしかすると、エルメスのカレが世界中で愛され続ける理由は、「流行」を作っているからではなく、「物語」を作り続けているからなのかもしれません。
もしご自宅にエルメスのカレが眠っていましたら、ぜひ一度、タグやデザインをじっくり眺めてみてください。
そこには、一枚のスカーフを超えた、長い歴史と物語が隠されているかもしれません。
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