完璧なサウンドを追求することは、おそらく、底のない暗い井戸を素手で掘り進むようなものなのだ。

僕たちは目の前にあるBOSS MS-3という四角い鉄の塊を眺めながら、そんなことを考える。
それは見事に静まり返り、ただそこにある。
この機材が暗示する「二つの生き方」についての文章。
音楽の夢をかなえる人間と、途中でそれをあきらめてしまう人間の違いについて、僕がこれまでに学んだいくつかのシンプルな事実をここに書き残しておこうと思う。
もちろん、それは人道的な正義や、ある種の効率性についての話ではない。もっと個人的で、いくぶん泥臭い、足元のスイッチについての話だ。
もしあなたがクローゼットの奥から古いレスポールを引っ張り出し、スタジオの冷たい床にBOSSのMS-3というマルチエフェクト・スイッチャーを置いたことがあるなら、僕が言おうとしていることの意味が静かに理解できるはずだ。あの機材には、人間の内面を映し出す奇妙な鏡のようなところがある。
結論から言ってしまえば、夢をあきらめる人間は「すべてを買い替えること」を望み、夢をかなえる人間は「手元にあるものを繋ぎ合わせること」を選択する。
多くの人間は、自分の出す音に耐えがたい歪みや、致命的な欠陥を見出したとき、こう考えてしまう。
「僕の持っているペダルはどれも旧式で、救いようがない。何もかもを捨て去って、最新のデジタル・プロセッサーに買い替えるべきなんだ」と。彼らはシステムをリセットし、完璧な新しい世界へ逃避しようとする。それは一見、勇敢な決断のように思える。でも、それは多くの場合、ただの静かな諦念に過ぎない。
しかし、MS-3という機材の設計思想は、それとはまったく異なる独自のベクトルを持っている。
その黒い筐体には、3つのインサートループという、いくぶん控えめだが決定的な空白が用意されている。それはこう囁いているのだ。
「君がこれまでの人生で集めてきた、傷だらけの、不器用なコンパクトエフェクターを捨てる必要なんてどこにもない。それをここに繋ぐんだ。君の古いこだわりを、僕の新しい回路(システム)とブレンドすればいい」
その黒い筐体には、3つのインサートループという、いくぶん控えめだが決定的な空白が用意されている。それはこう囁いているのだ。
「君がこれまでの人生で集めてきた、傷だらけの、不器用なコンパクトエフェクターを捨てる必要なんてどこにもない。それをここに繋ぐんだ。君の古いこだわりを、僕の新しい回路(システム)とブレンドすればいい」
夢をかなえる人間は、自分の過去を否定しない。彼らは、使い古されたお気に入りのオーバードライブ(それはまるで、何年も履き古した一足のローファーのように彼らの足に馴染んでいる)を大切に抱えたまま、新しいテクノロジーのループに滑り込ませる。彼らはリセットするのではなく、接続するのだ。
そしてもう一つの決定的な違いは、「一音の心地よさ」に溺れるか、それとも「持続可能なシステム」を構築するか、という点にある。
あきらめる人間は、スタジオの大きなアンプから鳴り響く、一瞬の完璧なディストーションの音に心奪われ、そこで思考を止めてしまう。それは確かに美しい瞬間だ。耳の奥がじんと痺れるような、完璧な夜の幻影。しかし、いざ現実のステージが始まり、曲が目まぐるしい展開を迎えると、彼らは足元でバタバタと不細工なタップダンスを踊る羽目になり、やがて演奏の辻褄が合わなくなっていく。
夢をかなえる人間は、もっと現実的で、いくぶん冷徹だ。彼らは「点」ではなく「時間の流れ」として音楽を捉えている。
Aメロからサビへ、そして静かなソリチュードを湛えたソロへ。その滑らかな移行のために、MS-3のパッチを緻密にプログラミングしていく。アンプのチャンネルを切り替え、MIDIの信号を送り、空間をリバーブで満たす。彼らが作っているのは音そのものではなく、音が過不足なく流れるための「美しい水路」なのだ。結局のところ、僕たちが音楽を続けていく上で、もっとも恐ろしい敵は才能の枯渇ではない。機材の重さに起因する、静かな疲労感だ。
Aメロからサビへ、そして静かなソリチュードを湛えたソロへ。その滑らかな移行のために、MS-3のパッチを緻密にプログラミングしていく。アンプのチャンネルを切り替え、MIDIの信号を送り、空間をリバーブで満たす。彼らが作っているのは音そのものではなく、音が過不足なく流れるための「美しい水路」なのだ。結局のところ、僕たちが音楽を続けていく上で、もっとも恐ろしい敵は才能の枯渇ではない。機材の重さに起因する、静かな疲労感だ。
何十キロもあるエフェクターボードを抱え、重いアンプを引きずって雨の日の街を歩くのは、誰にとっても楽な仕事じゃない。やがて小さな妥協が生まれ、スタジオへ向かう足は遠のき、情熱はすり減っていく。MS-3は、その圧倒的な軽量さによって、僕たちを「重さ」という引力から解放してくれる。
それは僕たちに、いつでも、どんな場所へでも、自分のサウンドをポケットに入れて出かけていけるフットワークを約束してくれる。チャンスの神様が不意にドアを叩いたとき、すぐに古いローファーを履いて飛び出せるだけの軽やかさが、そこにはある。
もしあなたの足元にMS-3があるのなら、もうこれ以上、自分に言い訳をする必要はない。
あなたの古いこだわりはループに守られ、未来への水路はすでにプログラミングされている。
あなたの古いこだわりはループに守られ、未来への水路はすでにプログラミングされている。
あとはただ、静かに息を吸い込み、その一番端にあるスイッチを迷わず踏み込めばいいのだ。たったそれだけのことだ。
