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【シチズン ハイソニック徹底解剖】毎秒360振動の音叉式時計はなぜ秒針が滑る?電池交換・構造・アキュトロンとの関係

公開日:2024年6月5日 | 最終更新日:2026年10月10日

時計の裏蓋を開けて、思わず手が止まる瞬間があります。

小さな歯車だけでも、液晶でもない。そこには二股に分かれた金属の「音叉」が鎮座している――。

今回ご紹介するシチズン「ハイソニック(HiSonic)」は、そんな一本です。

ゼンマイでも現代のクォーツでもない。電気で金属を震わせ、その震えを歯車の回転に変える。わずか数センチのケースの中で、電子回路と精密機械が同居する1970年代の技術的ロマンを、電池交換の実例とともに掘り下げます。

「腕時計が止まってしまった」「古い時計でも電池交換できる?」とお悩みではありませんか。質屋かんてい局つくば店では、腕時計の電池交換をはじめ、時計の修理についてご相談を承っています。

この記事でわかること

  • シチズン「ハイソニック」と音叉式時計の特徴
  • アキュトロンとハイソニックの技術的な関係
  • 毎秒360振動を針の動きへ変える機構
  • 一般的なクォーツ時計との構造の違い
  • 旧式電池と現行電池の電圧差
  • ヴィンテージ時計の電池交換と点検の注意点
  • つくば市で時計修理を相談する方法
シチズン ハイソニックの外観
シチズン ハイソニック

シチズン「ハイソニック」はどんな時計?

「電子時計」とひとくくりにすると、この時計の個性を見失います。

ハイソニックの特徴は、時間の基準は音叉の振動、針を動かす仕事は極小の機械部品というハイブリッド構成にあります。

アナログ時計を高精度化するために、時計職人が慣れ親しんだ歯車の世界へ電子技術を接ぎ木したような設計です。

1971年登場というタイミングも絶妙です。

日本では1969年にセイコーがクォーツ腕時計「クオーツ アストロン」を発売し、高精度化の競争が大きく動き始めました。

ハイソニックは、その変革期にシチズンが示したもう一つの電子式時計の解答だったと読むことができます。

「クォーツに負けた過渡期の時計」とだけ片づけるには、あまりにも独創的です。

ハイソニックは、シチズンが1971年に発売した音叉式電子腕時計です。米国ブローバ社との技術提携による技術を取り入れた、日本の腕時計史に残るモデルとして知られています。

今回お預かりした時計は、未使用の状態で保管されていた希少な個体でした。

音叉式は電池を動力源としますが、水晶振動子を使う一般的なクォーツ式とは仕組みが異なります。

腕時計が機械式から高精度な電子式へと発展した時代の技術を感じられる一本です。

ブローバ「アキュトロン」の遺伝子――国産ブランドに宿った音叉技術

音叉時計の物語を語るなら、アメリカのブローバ(BULOVA)が開発した「アキュトロン(Accutron)」を避けて通れません。

ハイソニックの初期系統は、アキュトロンの技術供与・ライセンスを背景に生まれました。

外観はシチズンでも、そのムーブメントを見れば当時の国際的な技術交流が透けて見えます。

コレクターが裏蓋を開けて注目するのが、ムーブメントの型番と刻印です。

ハイソニックの37系キャリバーには、ブローバのアキュトロン218系に強く関連する仕様が知られ、個体・型式によってはライセンス表示を見いだせます。

ただし、全ハイソニックが同じキャリバー、同じ刻印、同じ部品互換性を持つわけではありません。

実際の修理では、ケースや文字盤の名称よりもムーブメント刻印の確認が優先されます。

つまりハイソニックを楽しむ視点は二つ。一本の腕時計としての美しさと、当時の電子時計技術が国境を越えて受け継がれた「産業史の標本」としての面白さです。

音叉式時計の内部構造と動く仕組み

ハイソニックの内部ムーブメント
ハイソニックの内部構造

裏蓋を開けると、内部には当時ならではの電子部品が密集しています。

音叉式時計は、電磁的に振動させた音叉の動きを歯車に伝えて針を動かす仕組みです。

ハイソニックでは毎秒360回の振動が生じ、運針に利用されています。

一般的なクォーツ時計で聞こえる「カチッ」という音とは異なり、音叉式時計は耳を近づけると小さな連続音が聞こえる場合があります。

古い電子時計の内部構造は現行品と異なるため、作業時は部品を傷めないよう慎重な確認が必要です。

毎秒360回の振動は、どうやって秒針を進めるのか?

ここが音叉時計の真骨頂です。

電子回路とコイルが音叉を一定のリズムで震わせ、その往復運動を、細い送り爪(インデックス・ジュエル)と極小のインデックス車(送り車)で一方向の回転へ変えます。

大きく振り子が揺れる時計と違い、非常に小さな動きの積み重ねで歯車を送る仕組みです。

有名なアキュトロン218系に関連する構造では、直径約2.4mmのインデックス車に約300枚もの歯が刻まれています。

指先に載るほど小さな円盤の周囲に、肉眼では数えることすら困難な歯が並ぶ。これを電子制御された音叉の振動で駆動するのです。

「電子の精度」と「機械加工の限界への挑戦」が、同じ部品の中に存在する。

マニアにとって最大の見どころではないでしょうか。

秒針がほとんど途切れずに滑るように見えるのも、この高速な送り動作によるものです。

1秒に1回だけ進む一般的なステップ式クォーツとは、視覚的な印象が明確に異なります。

ただし音叉自体の360Hzと、秒針の回転数を同一視してはいけません。歯車による減速を経て、表示に必要な速度に変換されています。

マニアが聴きたい「音」動いている音叉時計に耳を寄せると、「チッチッチッ」ではなく、細く連続した電子的なハミング音が聞こえることがあります。

秒針のスイープとこの音が揃ってこそ、音叉時計ならではの生きた存在感です。

ただし音が聞こえないだけで故障と断定はできず、周辺環境や個体差もあります。

一般的なクォーツ時計との違い

一般的なクォーツ時計のムーブメント
クォーツ式時計のムーブメント例

写真のクォーツ式時計は、比較的小さなムーブメントをケース内のスペーサーで固定しています。

機種によっては複数のコイルやモーターを用いて、時針・分針やクロノグラフの針を動かします。

ハイソニックの音叉を振動させる仕組みとは役割が異なります。

比較項目 音叉式 一般的なクォーツ式
時間の基準 音叉の振動 水晶振動子
針の動作 音叉の振動を歯車へ伝える 電子回路とモーターで駆動
特徴 連続的な小さな振動音 幅広い機種で採用

ヴィンテージ音叉時計の電池交換が難しい本当の理由――1.35Vと1.55V

古い電子時計で最も慎重になりたいのが電池です。

初期の音叉式時計には、かつて公称1.35Vの水銀電池を前提とした設計がありました。

一方、現在一般的な酸化銀電池は公称1.55V。見た目やサイズが近くても、電圧は同じではありません。

古い音叉回路では、電圧の違いが振動状態や歩度、動作の安定性に影響する可能性があります。

ただし影響の程度はキャリバーや回路の状態で異なります。

「同じ大きさだから入る」「動いたから適正」とは判断できません。

現代の電池への置換を考える際は、ムーブメントの型番、指定電池、接点の形状、電圧条件を照合する必要があります。

電圧調整用の代替手段が使われる例もありますが、すべての個体に共通する処方箋ではありません。

さらに長期保管された時計は電池の液漏れによる接点腐食や、潤滑油の固着、極細の送り機構の不具合が隠れていることもあります。

新しい電池で一瞬動いたとしても、それが正常な連続運転や精度を保証するわけではありません。

ヴィンテージの電池交換は、「電池を替える作業」であると同時に「古いムーブメントの健康診断の入口」なのです。

ハイソニックの電池交換作業

構造を確認したうえで、既存の電池を取り外し、適合する電池に交換します。

ヴィンテージ時計では電池の規格やムーブメントの状態が重要です。

電池を入れ替えても動かない場合は、電池以外の不具合が考えられるため別途点検が必要になります。

ハイソニックの電池交換作業
電池交換作業中の様子

腕時計用の電池は非常に小さく、さらに小径の電池を使う機種もあります。

専用工具を使用し、電池や周辺部品を傷つけないよう取り扱います。

電池交換後は動作を確認し、裏蓋を閉じて作業を完了します。

電池交換後のハイソニック

動かない=電池切れではない。音叉時計の点検で見るべきこと

電池交換後も動かない場合、考えられる要因は一つではありません。

電池接点の酸化、電池規格との不適合、コイルや回路の不調、音叉の発振不良、インデックス車まわりの固着など、電子系と機械系の双方に原因が潜みます。

特にインデックス車と送り爪は非常に繊細で、不用意に触れたり無理に回したりすると損傷を招きかねません。

現行クォーツ時計のように「電池を入れ替えて終わり」といかない理由は、まさにこの微細な機械機構にあります。

分解や調整には専用知識が必要ですので、動かない個体を無理に操作せず専門家へ相談することをおすすめします。

今回の事例は、実際にお預かりした時計を確認しながら電池交換を進めたものです。

写真に写っていない工程や測定結果まで実施したと断定するものではありません。古時計では状態が一台ずつ異なることも、修理の面白さであり難しさです。

電池交換時に確認したい防水パッキン

一般的な腕時計の裏蓋には、水分やほこりの侵入を抑えるためのゴム製パッキンが取り付けられているものがあります。

ただし、すべての時計に備わっているわけではなく、今回のハイソニックには防水用パッキンがありませんでした。

劣化した防水パッキン

ゴム製パッキンは使用環境や経年変化によって硬化・伸び・ひび割れなどが生じます。

写真のパッキンも変形が見られ、劣化が進んでいました。

電池交換にあわせてパッキンの状態を確認し、必要に応じて交換を検討することが大切です。

取り外した防水パッキン

劣化したパッキンは、わずかな力で切れてしまうことがあります。

パッキンを新しくしても、それだけで時計の防水性能を保証できるわけではありません。

防水性能の確認には、機種に応じた検査が必要です。

時計の電池交換に関するよくある質問

Q. 電池交換にはどれくらい時間がかかりますか?

A. 元記事で紹介した作業例では約10分、内部の異物除去が必要な場合は約15分が目安でした。実際の所要時間は機種や状態、当日の受付状況によって異なります。

Q. 古い腕時計も電池交換できますか?

A. 機種に合う電池の有無や内部状態によって対応可否が変わります。ヴィンテージ時計は個別に確認が必要なため、まずは現物をお持ち込みください。

Q. 電池交換だけで防水性能は回復しますか?

A. いいえ。パッキンの交換だけでは防水性能を保証できません。必要に応じて防水検査や追加の修理をご相談ください。

Q. ハイソニックはクォーツ時計ですか?

A. いいえ。電池式の電子時計ですが、水晶振動子ではなく音叉の振動を時間の基準にする音叉式時計です。

Q. 秒針が滑らかに動くのはなぜですか?

A. 音叉の高速振動を送り爪とインデックス車によって連続的な歯車の回転へ変換するためです。一般的な1秒1ステップのクォーツ式とは動き方が異なります。

Q. 現行の1.55V電池をそのまま使えますか?

A. 初期の音叉式時計には1.35V電池を前提としたものがあります。適合性は型番や回路の状態によって異なるため、一律に使用可能とは言えません。

技術資料・参考文献

音叉式の機構とキャリバーの系譜については、以下のヴィンテージ時計資料・専門修理記事を参考にしました。

まとめ|音叉式時計の魅力は、精密機械と電子技術の融合にある

シチズンのハイソニックは、一般的なクォーツ時計とは異なる音叉式の機構を持つ歴史的な腕時計です。

毎秒360回という音叉の振動を、繊細な送り爪とインデックス車で針の動きへ変える。その仕組みには、1970年代の時計技術者たちの創意工夫が詰まっています。

クォーツ時計が市場の主流となった現在でも、音叉式時計が熱心なコレクターを惹きつける理由は、こうした独特の構造と時代背景にあるのでしょう。

古い腕時計の電池交換では、適合する電池の確認や内部状態のチェックが大切です。

つくば市で腕時計の電池交換・時計修理をお考えの方は、質屋かんてい局つくば店にご相談ください。

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